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行政書士試験の独学の有効性【試験科目&出題傾向の分析】

法律系資格の登竜門的存在として位置付けられることの多い行政書士は、これまで法学部出身者でない初学者でも、独学で十分合格が狙える国家資格だと言われていましたが、行政書士試験は回を重ねるごとに試験科目や出題問題数、解答方式などが度々改正されてきました。

そこで、今なお行政書士試験は独学による勉強スタイルが適しているのかどうかを様々な角度から分析してみたいと思います。
法令科目 分野
昭和時代の行政書士試験は、過去問中心の暗記型勉強法でもある程度得点が稼げる試験でしたが、新試験制度の下での法令分野は、広く浅い知識をベースに、より深い法知識が求められるようになりました。

行政書士試験は、平成18年度実施分より試験制度に大幅な変更がみられましたが、試験科目の変更もそのひとつで、問題数自体も法令科目【40問 → 46問】と一般知識【20問 → 14問】とで問題数の変化がみられます。
法令科目の変更 出題配分
試験科目 H26 H27
択一式 多肢選択式 記述式 択一式 多肢選択式 記述式
基礎法学 2 2
憲法 5 1 5 1
行政法 行政法の一般的な法理論 5 19 2 1 3 19 2 1
行政手続法 4 3
行政不服審査法 2 2
行政事件訴訟法 3 4
国家賠償法 1 2
地方自治法 3 3
その他 1 2
民法 9 2 9 2
商法 5 5
合計 46 46
改正当時は、この問題数の増減が、今後どの試験科目にどの程度影響してくるかが、試験対策を行う上での大きなポイントのひとつとなりましたが、これまでの試験データを振り返ってみると、従来に比べて、《行政法》と《民法》科目をより重視する試験へと変わったようです。

特に行政法に関する問題数の増加は顕著ですが、行政書士という立場上、この傾向は今後も続くと思われることから、いかにこの法令科目を克服し、得点に結びつけることができるかが、合否を左右するポイントになってくるので、行政法を苦手とする独学の受験生は従来よりも厳しい試験になることが予想されます。

なお、新試験制度後の新たな出題パターンともいえる〝多肢選択式問題〟は、毎年、必ず出題され続けていますが、問われる内容は、例年、標準レベルの問題が中心のようです(一部、解答が難しいものも見られますが、部分点で合格ライン程度の得点は稼げます)。

そのため、基本的には独学であっても特に積極的に個別の対策を練る必要はなさそうですが、近年は判例からの出題が目立っているので、狙われやすい重要判例は押えておく必要がありそうです。
一般知識 分野
新試験制度以降、行政書士試験の一般知識分野は問題数が減少しましたが、これまで通り、合格基準に〝満点の40%以上〟という合格基準が設けられていることから、その重要性が薄れたわけではありません。

下記に平成26年度、平成27年度実施分の出題配分&出題内容を下記表にまとめてみましたが、一般知識問題は法令科目に比べると、例年、① 政治・経済・社会 ② 情報通信・個人情報保護 ③ 文章理解の3分野から、比較的、バランスよく出題されており、よっぽどのことがない限り、出題配分に関しては、おそらく今後も同様の傾向が続くと思われます。
H26 H27
テーマ 得点配分 テーマ 得点配分
政治 ・政治資金
・中央政府の行政改革
2問
(8点)
・国際連合と国際連盟
・日本の選挙
・貧困問題
3問
(12点)
経済 ・世界都市
・公債発行
・国際経済
3問
(12点)
・今日の日本経済 1問
(4点)
社会 ・核軍縮と核兵器問題
・人口構造
・難民問題
3問
(12点)
・空き家問題
・日本の島
・高齢者問題
3問
(12点)
情報通信 ・インターネットによる選挙運動
・住基台帳ネットワークシステムと住基カード
2問
(8点)
・情報公開法および文書管理法
・行政機関個人情報保護法
2問
(8点)
個人情報保護 ・個人情報保護法 1問
(4点)
・情報セキュリティ用語
・位置情報
2問
(8点)
文章理解 ・適語(接続詞)補充
・適語補充
・文章並び替え
3問
(12点)
・文章内容の把握
・文章構成(並び替え)
・適語補充
3問
(12点)
しかし、本試験では非常に細かく深い知識を問う難問がしばしば見られ、必ずしも得点に結びつくとは限らないのが一般知識問題です。

そのため、勉強すべき範囲が絞りづらく、独学による学習スタイルで試験対策に望んでいる方の中には、無駄に学習時間を増やしてしまい、悪循環に陥っている受験者も少なくないようです。

そのため、独学の方は、①よりも、比較的学習範囲の狭い②や、問題慣れしておくことで得点源としやすい③に重点を置いた学習に努め、あまり深入りしすぎない方が良いかもしれません。




試験制度からみた行政書士試験の独学の有効性

行政書士試験は、基本的にセンターが公表している合格基準を満たすことさえできれば、合格を手にすることができる試験制度(絶対評価)を採用しています。

※補足:ただし、平成26年度試験において初の補正的処置が行われたため、完全な絶対評価試験と言うわけではありません。
次の要件のいずれも満たした者を合格とします。

(1)行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、満点の50%以上である者
(2)行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、満点の40%以上である者
(3)試験全体の得点が、満点の60%以上である者

※ ただし、合格基準は問題の難易度を評価し、補正的措置を加えることもある
そのため、社会保険労務士や税理士試験のように、上位●●%のみが合格するような相対評価試験とは異なり、他の受験者と競い合って上位を目指す必要はないので、必ずしも公開模試を受け受験者全体の中での自分の位置を確認しながらレベルアップを図らなければならない試験というわけではありません。

そういう意味では自分との戦いであり、独学に向いた試験であるとも言えますが、この試験制度は裏を返せば、試験問題の難易度に合否が左右されてしまうというリスクも併せもっています。

つまり、試験問題が易しかった年度は合格者も増えますが、難易度の高い試験問題が多く出題された年度に受験してしまうと、大勢の受験者が不合格となってしまうというものです。

そのため、行政書士試験は、ある意味、運に左右されやすい試験だと皮肉られることもあり、自分の得意分野で得点を稼げた受験者にとっては、独学で十分対処できる試験だったと感じてしまっている人も少なくありません。

ただし、近年における行政書士試験の出題傾向は、従来に比べると理解力・思考力に重点をおいた問題が目立ち始めているので、過去問を中心とした暗記型の勉強法しか思いつかないという方にとっては独学による学習スタイルは厳しいものがあると思われます。





独学 or 講座 !? 行政書士受験生が取るべき学習スタイルとは…

行政書士試験は、大きく「法令」と「一般知識」分野に分かれますが、どちらも試験範囲は広く、ポイントを絞った試験対策を行わなければ学習時間はいくらあっても足りません。

また、先にも触れましたが、ここ近年における行政書士試験は、全体的に理解力・思考力に重点をおいた問題が出題される傾向にあります。

過去の合格率推移状況からみても、本試験で出題される問題の難易度は、実施年度によって大きく変わってくるので、もし仮にあなたが得意とする科目の難易度が高かった場合には、必ずしも得点が稼げるとは限らないので、できるだけ苦手科目を克服し、どんな問題であっても合格ラインを超える程度の実力を身に付けておくことが大切です。

そのため、従来の学習スタイルに比べ、近年は独学よりも本試験の出題傾向を分析し、最小限の学習時間で試験突破を試みる専門講座を利用する受験者が増えていますが、行政書士試験は受験者同士で競い合う相対評価試験ではないので、短期合格は厳しくとも、中期的な戦略で臨めば独学による学習スタイルでも十分合格は狙えるはずです。

しかし、詰め込み式の暗記型勉強法しか思いつかない方や、市販テキストや問題集のみでは理解力や応用力を身に付けるのは難しいと不安に感じている方は、独学は厳しいものがあると予想されます。

そこで、参考までに行政書士試験対策には定評のある大手スクール(資料請求自体は無料)を2つほど紹介しておきます。

必ずしもおススメというわけではありませんが、いずれも定番の大手資格スクールであり、使用教材やカリキュラムはそれなりにしっかりとしたものが用意されているので、独学に不安を感じているような方は、利用するしないにかかわらず、まずは案内資料を取り寄せるなどして内容をチェックしてみてはいかがでしょうか。

また、最近の資格スクールが配布しているパンフレットは、近年の出題傾向や学習スケジュールなど、行政書士試験対策に役立つ知識が非常によくまとまっているものも少なくないので、ガイドに目を通すだけでも損はないでしょう。

要は、やる前から講座利用(あるいは独学)に固執するのではなく、自分が無理なく始められる学習スタイルを慎重に検討することが何よりも大切です。
大手スクール行政書士講座の特徴
資格の大原 行政書士講座
行政書士は法律系国家資格の登竜門的な資格であることから、法律の勉強は初めてという初学者も少なくない。

大原では入門者向けコースをはじめ、既にある程度、法知識の身に付いている上級コースなど、自分の現時点での実力に合わせた講座選択ができる点はLECなどとほぼ変わらない。

また、教育訓練給付金制度の指定コースもあるので、該当者はその制度を活用するとよいだろう。(LECなどでも対象講座あり)
会計系資格に強いTACだが、近年は法律系資格にも力を入れており、それなりに実績もあるようだ。

大手資格スクールだけに、試験攻略のノウハウは十分にあるため、初学者でも無理なく実力が身に付くよう毎年改訂されるオリジナル教材を使用しながら、効率的に学習できるカリキュラムが組まれている。

行政書士レベルであれば、大手スクールの内容に合否を大きく左右するほどの差はないので、後は使用教材の内容や費用、フォロー制度等をパンフなどで他校と比較しながら、自分に最適な講座を選択してほしい。

豆知識:教育訓練給付制度とは…?

厚労省が実施する雇用保険の給付制度で、厚労大臣が指定する講座を受け修了した受講者は、支払った受講料の一部が雇用保険から支給されます。つまり、簡単に言ってしまえば、本来、支払うべきであった受講費用が安くなる!という制度です。ただし、この教育訓練給付制度は誰もが無条件で利用できるものではなく、一定の条件や支給金額に上限があるので、給付制度の利用を考えている方は必ずよく確認してください。行政書士のような国家資格は給付制度対象講座となっているケースも多いので、社会人受験者等は一度検討してみましょう!
支給対象者 雇用保険の一般被保険者である期間が通算3年以上(初回利用者は1年以上)
※ 一般保険者でなくなった離職後1年以内に教育訓練を始めた者も利用可。
給付率 20%(上限支給額 … 10万円)

【平成28年度4月末現在】