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司法書士試験対策:試験科目からみた独学の有効性

司法書士試験は、独学よりも受験指導校などの専門講座を利用しながら勉強し、本試験に臨む受験スタイルが一般的ですが、ここでは、あえて独学による学習スタイルを貫いた場合の有効性について考えてみたいと思います。

司法書士試験は、筆記試験(7月)と口述試験(10月)に分かれますが、筆記試験合格者にのみ行われる口述試験で不合格になる者はほとんどいないため、受験者にとっての最大の山場は、前者の筆記試験にあるとみて間違いありません。

したがって、独学による勉強スタイルが、果たして筆記試験対策に適しているかどうかが大きな焦点となってきます。

まず、司法書士試験の筆記試験ですが、民法や不動産登記法をはじめ、全11科目で構成されており、どの試験科目も、比較的、広範囲から出題されるため、受験者が学習しなければならない情報量は、ビギナー受験者が思っている以上に膨大です。

一般的に司法書士試験対策に要する総学習時間は、独学・専門講座利用問わず、少なく見積もっても1,500~2,000時間程度は必要だろうと言われていますが、ただ闇雲に試験範囲を勉強しているだけでは、学習時間はいくらあっても足りません。

したがって、試験範囲を完璧にマスターして本試験に臨むことはまず不可能ですが、なにも満点を目指す必要はないのが司法書士試験です。

というのも、司法書士試験は受験者同士の競争により、成績上位者の一部が合格する相対評価試験なので、受験者は一定の実力さえ身に付けてしまえば、合格できる試験だからです。

したがって、これまでの試験結果の足切りラインを踏まえると、8割程度の得点を叩き出せる実力をもって本試験に臨むことが重要になってくるわけですが、実はここに大きな落とし穴があります。
試験科目 解答方式 試験時間
午前の部 ・憲法
・民法
・商法
・刑法
多肢択一式
(マークシート)
2時間
(9:30~11:30)
午後の部 ・不動産登記法
・商業登記法
・民事訴訟法
・民事執行法
・民事保全法
・供託法
・司法書士法
多肢択一式
(マークシート)
3時間
(13:00~16:00)
・不動産登記
・商業登記
記述式
(書式)
基準点 合格点
(280点満点)
午前の部 午後の部
多肢択一式
(105点満点)
多肢択一式
(105点満点)
記述式
(70点満点)
H25 84点
(80.0%)
81点
(77.1%)
39.0点
(55.7%)
221.5点
(79.1%)
H26 78点
(74.3%)
72点
(68.6%)
37.5点
(53.6%)
207.0点
(73.9%)
H27 90点
(85.7%)
72点
(68.6%)
36.5点
(52.1%)
218.0点
(77.9%)
H28 75点
(71.4%)
72点
(68.6%)
30.5点
(43.6%)
200.5点
(71.6%)
法書士試験は、なぜそうなるのか?といった考え方を問う問題が目立つため、例年、正答率70~80%前後で推移している、比較的高めの足切りラインを上回るには、単に過去問の丸暗記では厳しいものがあります。

つまり、試験対策を独学で行う方は、過去の科目別出題傾向を分析し、重要論点がどの部分にあたるのかを見抜く力が必要であり、かつ、理解力重視の学習を各科目バランスよくしていかなければらならないわけです。

そのため、司法書士試験のように試験科目が多く、かつ、学習すべき範囲がとてつもなく広範囲にわたる国家試験においては『どれだけ勉強したか』ではなく『何をどう勉強してきたか』の方がとても重要になってくるので、市販テキストを読んだだけでは理解できそうもないような方には、独学はあまり適さない試験といえるでしょう。
合否の鍵を握る主要4科目
先にも説明したとおり、筆記試験の試験科目は11科目にも及びますが、下記データからも見てとれるように「民法」と「不動産登記法」「商法」「商業登記法」の4科目が全体の約75%を占めています。
出題比率(多肢択一式問題)
試験科目 出題数(計70問) ウェート
民法 20問 28.6%
不動産登記法 16問 22.9%
商法 9問 12.9%
商業登記法 8問 11.4%
民事訴訟法 5問 7.1%
憲法 3問 4.3%
刑法 3問 4.3%
供託法 3問 4.3%
民事執行法 1問 1.4%
民事保全法 1問 1.4%
司法書士法 1問 1.4%
【参考:平成28年度試験】
多肢選択式問題の出題比率グラフ
つまり、司法書士試験は、この主要4科目を本試験までに、いかに効率よく学習することができたかが最大のポイントになってきます。

私たちの生活と密接な関係がある民法に関しては、比較的、理解しやすい分野といえますが、商法や不動産(あるいは、商業)登記法となると、社会経験のない学生や、畑違いの職場で働いている社会人にとっては、イメージし難く理解しにくい側面があるといわざるを得ません。

そのため、法律初学者が、一から独学で司法書士試験の勉強を始めるとなると、試験の全体像掴むまでに相当な時間を費やすことが予想されます。

しかし、司法書士試験における択一式問題は、過去問中心の勉強が主体(ただし、丸暗記はダメ!)となってくるので、比較的、勉強時間に余裕があり、長期的(1~2年程度の覚悟は必要!ただし、あまり長すぎてもモチベーションが下がるだけでなく、試験傾向が変わってきてしまうといった別の問題も出てくるので、出来るだけ短期合格を目指した方が賢明)な学習プラン・スケジュール管理が自分で出来る自信があるような方は、独学による勉強スタイルで試験対策をはじめてみるのもよいかもしれません。





科目別出題傾向からみた独学の有効性

司法書士試験は、午後の記述式問題を除くと、解答はすべて5肢択一のマークシート方式で行われます。
:債務の不履行による損害賠償に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア:金銭債務の不履行が不可抗力による場合であっても、債務者は、その金銭債務の遅延損害金を支払わなければならない。

イ:債務の不履行について損害賠償の額の予定があっても、債権者は、債務の不履行によって被った損害額がその予定額を超えることを立証すれば、その超過する部分について損害賠償の請求をすることができる。

ウ:当事者が金銭でないものを損害の賠償に充てるべき旨を予定した場合には、その合意は、有効である。

エ:貸金債務について年3パーセントの利率で利息を支払うとの約定がある場合において、貸金債務の遅延損害金について利率の約定がないときは、遅延損害金の額は年3パーセントの利率により定まる。

オ:債務者の責めに帰すべき事由により債務の履行が遅滞している間にその債務が履行不能となったとしても、その履行不能が債務者の責めに帰することができない事由によるときは、債務者は、その履行不能につき損害賠償責任を負わない。


1.アウ 2.アオ 3.イウ 4.イエ 5.エオ

【平成28年度 司法書士試験(多肢択一式問題)より抜粋】
他の資格試験に比べると、実務重視型の問題が目立つ科目も多く、出題パターンは問題文をよく読まないと誤解答をしてしまうようなものも少なくありません(例:正しいものと誤っているものを選ばせる正誤問題がランダムに出題…など)。

また、合否の鍵を握る得点配分の高い主要4科目(民法|商法|不動産登記法|商業登記法)については、正確な知識はもとより、条文や判例に関する理解力や考え方が求められているようで、独学の初学者には特に対処しきれない論点が出てくることが予想されます。

ただし、司法書士試験における択一式問題は、過去に問われたことのある論点が、繰り返し出題される傾向が強いため、過去問題を主体とした勉強スタイルが中心となってくることを考慮すると、ある程度試験慣れしている受験生であれば、択一式問題に関しては、独学でも、比較的、学習しやすい分野であるといえるかもしれません。
試験科目 出題傾向と特徴
午前の部 憲法 平成15年度より新たに加わった試験科目。重要判例の知識や理論考察を問う問題など、出題パターンもバリエーションに富んでいる。
民法 出題形式がバリエーションに富んでおり、難易度(基礎~難問)も一定ではない。
商法 主に条文に関する知識問題が多く出題される傾向にあり、比較的、最新の法令改正点が狙われやすい。
刑法 判例に関する知識・考察を中心とした問題が多い。
午後の部 不動産登記法 登記手続きに関する条文や全体像の理解を問う問題が中心となるが、近年、深い知識も求められる傾向にある。
商業登記法 登記手続き全般(特に株式会社)の正確な知識が重要。
民事訴訟法 簡易裁判所の訴訟代理が業務の一環として行えるようになったため、出題問題は難化傾向にある。条文の正確な理解が必要。
民事執行法
民事保全法
供託法 暗記要素の強い科目であり、過去問題が学習の中心となってくる。
司法書士法
記述式問題対策
記述式問題で出題される試験科目は、問題の性質上、民法なども大きく絡んできますが、メインは不動産登記と商業登記の2科目です。

司法書士試験の記述式問題は、登記に必要な申請書の作成や申請時に必要な添付書類等について問われる問題が多く、非常に実務を意識した内容になっているため、実務経験のない独学受験者からすると、最初は戸惑うことも少なくないでしょう。

記述式問題は、択一式問題に比べると基準点が低いことから、高得点を狙うのはやめ、あくまで足切りラインである基準点をクリアするための学習を心がけた方がよさそうです。
不動産登記 商業登記
登記申請書の作成をはじめ、なぜその添付書類が必要となるのか?等、その根拠について問われる問題が中心。かつて、過去問を中心に書式パターンを丸暗記する試験対策が有効な時期もあったが、近年は、不動産登記法や民法の基礎知識・理解力をベースとした、より応用力が重視される出題問題に変わりつつある。 不動産登記の記述式問題と同様、登記申請書の作成をはじめとする実務色の強い問題が出題され、商法などの法令も大きく絡んでくる。試験対策に関しても、不動産登記と同じく、出来るだけ多くの書式問題を解き、慣れ親しんでおくことが基本となってくる。
近年は、事実関係の整理に掛かる時間や出題問題自体の分量(解答欄に記載すべき分量や問題の長文化)が増加傾向にあり、問題の主旨をいかに正確に読み取り解答するか、その迅速な事務処理能力が要求される試験へと変わりつつあります。

そのため、最近の出題傾向を踏まえると、独学スタイルに固執するのではなく、苦手分野に関しては資格スクールの専門講座を利用するなどして、柔軟に対処しながら試験対策を講じていくことをお勧めします。

参考までに司法書士試験には定評のある大手受験指導校(資料請求自体は無料)を2つほど紹介しておくので、独学を考えている方も、一度、案内資料を取り寄せるなどして、使用教材やカリキュラムなどをチェックしてみてはいかがでしょうか。

専門スクールでは「いったいどのようなカリキュラムやスケジュール管理のもとで試験対策を行っているのか?」を把握することは、これから独学で試験対策に取り組む受験者にとっても十分参考になるはずです。
独学が不利とされやすい主な理由
チェック法改正点などに目を光らせていないと、誤った知識で本試験に臨んでしまう恐れがある…

チェック講師がいないため、理解できない点や疑問点は、すべて自分で調べて解決しなければならない…

チェック出題傾向などを分析し、学習すべき重要論点などはすべて自分で探さなければならず、効率が悪い…

チェック競争試験なので、現時点での自分の実力を知りにくい…

※ ただし、インターネットが普及したため、以前に比べると情報収集はしやすくなっています。
司法書士講座の特徴
司法試験に特化した受験指導校としてスタートしたという経緯もあり、特に法律系の国家資格試験対策には高い合格実績があるスクール。

講師に対する良い噂・悪い噂はあるが、講師層は厚く、法律系の資格取得に関するノウハウは、他の大手スクールよりも徹底している感はある。

また、伊藤塾と言えば、市販テキストが人気あるように、使用教材の質には定評があるため、専門講座の利用を考えているなら、検討してみる価値がある一校といえるだる。
法律系の資格試験対策には実績がある大手受験指導校のひとつがWセミナーである。

この手の超難関試験は講師陣が重要な鍵を握ってくるが、その点、Wセミナーはベテランの実力派講師(受験生から絶大な支持を得ている講師も在籍)を多数抱えているため、自分が理解しやすいと思える講師が見つけやすい。

また、意外と見落としがちなのがフォローシステムであるが、質問電話をはじめ、i-supportや追っかけフォローなど、フォロー体制も抜かりはないので、講座利用を考えている者は、一度、検討してみてほしい。